脊柱管狭窄症の症状は下肢の痺れと痛み
脊柱管狭窄症は、脊柱管を形成する骨性・椎間板組織、靭帯を含む脊柱管空間が狭くなることによって、神経組織が圧迫されて様々な症状を呈する症候群です。
脊柱管の中央部分だけが狭窄するタイプ、側方部分だけが狭窄するタイプ、両方が狭窄するタイプの3タイプに分けることができます。
症状は
・腰から下肢の痛み、痺れ
・下肢の脱力感
・下肢の知覚の鈍り
・下肢の腱反射の低下
頸椎、胸椎、腰椎のいずれの部位でも発症しますが、
胸椎は稀で腰椎が圧倒的に多いです。
症状は、脊柱管狭窄を起こした脊椎の部位で異なります。
頸椎の場合、重症例では四肢麻痺をきたすこともあります。
稀ではありますが、胸椎の場合も体の麻痺をきたすことがあります。
腰椎の脊柱管狭窄症の場合、前かがみの姿勢を取っている方が楽なことが大半です。
脊柱管狭窄症の典型的症状の馬尾性間欠性跛行
腰痛で整形外科受診すると、おそらく医師は、あなたが診察室に入ってきた時からじっとあなたのことを見つめているでしょう。
これは、あなたが美人だからという理由だけではなく、あなたの歩き方や体の動かし方などを観察しているのです。
診察は、あなたが「こんにちは」と診察室に
1歩足を踏み入れた時点で始まっています。
名医や良医は、あなたが診察室に入って来ると
同時に診察を始めています。
このとき、前かがみで歩いていれば、脊柱管狭窄症が疑わしくなります。
そして、医師は「体を前に倒してください」、「後ろに逸らせてください」、「横に曲げてください」などと身体診察をしていきます。
前に倒すと痛みが出る場合は腰椎椎間板ヘルニアが、後ろにそらすと痛みが出る場合は脊柱管狭窄症が、動きに関係なくじっと安静にしていても痛い場合は泌尿器科や婦人科や消化器科の疾患が疑わしいので、このような身体診察は重要です。
腰椎脊柱管狭窄症の場合、もう一つ典型的な特徴があります。
医学用語では「馬尾性間欠性跛行」と言います。
これは、歩いていると腰や太ももの裏やひざなどの下肢に電気が流れるような疼痛やしびれや脱力感が出現し歩行困難になったり歩けなくなったりします。
しかし、しばらく前かがみの姿勢で休憩すると、症状は消えるか軽減するため、また歩くことができるようになります。しかし、また歩行を再開すると、しばらくして同様の痛みやしびれなどが出て来てまた歩けなくなる、というものです。
「跛行(はこう)」というのは足を引きずって歩くと言う事で、「間欠性」と言うのは一定時間を置いて起こったり消えたり軽減したりすることです。
「馬尾性(ばびせい)」と言うのは、腰に走っている馬尾神経と呼ばれる神経が圧迫されることによって症状が起きているので、このように言われています。
このように馬尾性間欠性跛行は、馬尾神経が圧迫されることによって、痛みや歩行困難が出現したり、休息することで消えたりする、という意味です。
これが腰椎脊柱管狭窄症で見られる症状の大きな特徴だと言えます。
医師が診察室に患者さんを呼び入れると、待合から診察室まで少し距離があるような場合は、前かがみで痛そうにソロリソロリと診察室に入って来られます。そして中には、入室した途端にそれ以上歩けなくなってしゃがみ込んでしまう患者さんもいます。
患者さんの中には、「スーパーでカートを押して歩くと楽です」と表現する人もいます。これはカートを押すと前かがみの姿勢で歩けるからでしょう。
また中には、いつもはバスで来院されるのに、「歩いたり立ったりするのはつらいけど、自転車が一番楽なので、ペットボトルのお茶を飲みながら、今日は自転車で来ました」と、真夏に30分も自転車を漕いで来院した、と汗だくになって言う患者さんもいました。
これも、自転車のハンドルにもたれるようにして前かがみになるのが一番楽な姿勢なのでしょう。身体診察をして、椅子に座って貰ってお話を聞き、「それではまずは腰のレントゲンを撮って来てください」と医師が言うと、患者さんは立つのを少しためらいます。
大抵の場合は前かがみで腰を曲げたまま机に手をつくなどして、恐る恐る立ち上がります。そして背筋が伸びた途端に「痛っ」などとしゃがみ込んでしまったり、声が出たりします。
腰から太ももやひざなどの下肢に痛みが走る、脱力して歩けなくなるなど、歩行に支障を来しますので、日常生活にも影響し、患者さんのQOL(生活の質)が低下します。
また、さらに狭窄が高度になると、下肢のまひや直腸や膀胱も麻痺してしまいます。
馬尾神経は膀胱や尿道や直腸、肛門に繋がる神経の出発点だから、ここが損傷してしてしまうと、排泄にまつわる不都合が出てきます。
外性器から肛門にかけてのしびれや違和感、便秘、頻尿、排尿困難、尿や便の失禁、尿漏れ、中には尿が出なくなるということもあります。しかし、尿漏れや失禁があっても、自分からそのことを医師に告げる患者さんは少ないです。
医師の方でも、患者さんの口からは言いにくいだろうと、問診で尋ねるかと思いますが、もしもこのような症状がある場合は、恥ずかしがらずに告げることが大切です。口で言い難ければ、メモに書いて医師や看護師に渡して告げるのも一方法でしょう。
患者として、情報提供はしっかりと行いましょう。
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